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安全地帯・玉置浩二を知らない人のための 過去作品見取り帳(その2)

こんにちは、ぽちです。

 

今回は前回に引き続き、安全地帯とそのメインボーカル玉置浩二(略して安玉)についての記事です。

 

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 1992年の安全地帯活動休止以降の時代を振り返ります。

 このころは玉置ソロの活動が中心になります。この時期についてはファンの間でも賛否両論ありますが、僕は肯定的にとらえています。

 

確かにクールでカッコいい安全地帯を望む人の眼には、この時期は玉置一人で迷走している時期にうつるかもしれませんが、この時期があったからこそ玉置はソロとしての独自の魅力を開花させられたんだと思うんですね。

 

現在の安玉があるのも、このころのソロ活動が良い「肥し」になっていると考えると、今回紹介する時期も決して無駄ではないのではないでしょうか。

 

では、そのソロ活動を1993年から見ていきましょう。 

 

1 「不安定」期(1993~1995年)

カリント工場の煙突の上に

都会の恋愛家から脱却する動きを見せ始めた90年代初期の安全地帯。

その動きは玉置がソロ活動になってから一気に加速します。

 

 ソロ一発目のアルバム「あこがれ」は、ピアノを中心としたバラード集で、まだ「バラードの玉置」のイメージを維持した作品でしたが、その次のアルバム「カリント工場の煙突の上に」でその流れをぶっ壊します。上のジャケ写を見てください。当時の玉置を知る人間からすると信じられない作風です。

 

これ以前から玉置は故郷である北海道をテーマにした音楽を作る傾向にあったんですが、ソロになってギターの弾き語りを中心にしたホームメイドチックな作風になってからその傾向に拍車がかかります。のちのヒットする「田園」もこの流れから発展したものでしょう。

 

 とはいえ、このころの玉置は「田園」にみられるような「麦わら帽をかぶった明るいおじさん」ではありません。かなりナイーヴで不安定な感じ。玉置自身も明言していますが、このころはいろいろ病んでいたようで、故郷をテーマにした曲が多いのもそれが原因なんだと推測しています。

 

そんな玉置の精神状態の表れなのか、この「カリント工場の煙突の上に」に収録されている作品は、故郷をテーマにした弾き語りであるにもかかわらず、それほどホンワカしていません。音をわざとひずませたり、囁くように歌ったかと思えば急に絶叫したり・・これは玉置の遊び心というより、自身の不安定な心境をぶちまけた心の叫びのように感じるのは僕だけでしょうかね。

 

つまりこのアルバムの作品は「童謡」であり「ロック」なんです。

はじめて聴く人には癖のある作品に聞こえるかもしれませんが、一度この玉置の表現力に魅入られてしまうと、もう他の歌手では物足らなくなってしまうんです。

 

このアルバムの後、玉置は「LOVESONG BLUE」で少しバラード色を取り戻しますが、作品全体を見るとやはり安全地帯のころとは違います。曲単位でいうと、「正義の味方」のポジティヴ感や「愛してるよ」の「はっちゃけ」感などは、少しずつですが「田園」の作風に近づいている気がします。

 

ナイーヴな青年の心を残した玉置が、そろそろ面白いおじさんになってみようか、と方針転換し始めた過渡期なのかもしれません。

 

その後の1995年は、シングルとライブアルバムのみで目立った作品は出していませんが、このころから玉置の歌唱がかなり変わっています。声が太くなってきたというんですかね。以前のようにもの真似されるような歌い方もなくなりました。この歌唱法は「田園」に引き継がれます。

 

・・と、この項だけでだいぶ長くなってしまいました。

それだけ玉置の中でいろいろな変化があった激動の時期だったということでしょう。ただ、この時期は不安定ながらも、今後のソロ活動の基盤を作った重要な時期であることは間違いありません。

 

 

 2 ソロ黄金期~田園時代~(1996~1997年)

 

CAFE JAPAN

不安定で病んでいた玉置が、開き直って疾走を始めた頃です。

まさに「生きていくんだ それでいいんだ」ですね。

 

上記のアルバム「CAFE JAPAN」に収録されている「田園」は、安全地帯時代を含めて玉置最大のヒット曲になりました。この曲に感銘を受けた有名人も数多く、最近ではあのビートたけしも不遇な時期にこの曲に励まされたといいます。

 

田園だけでなく、玉置ソロ時代の代表曲はこの時期に生まれたものが多いです。

コメディな印象が強い時期ですが、バラード系の曲も名曲が多いです。安全地帯時代とは違った男女の愛を超えた「『人』に対する愛」が感じられる作品になってきてますね。田園と同じくCAFE JAPANに収録されている「メロディ」や、JANK LANDに収録されている「Mr.Lonely」「しあわせのランプ」は今でもファンの間では根強い人気を誇ります。

「カリント~」時代よりも初心者でもとっつきやすい作品が多く、いまから玉置浩二を聴こうという人は、とりあえずこの時期のものから始めるといいかもしれません。田園を中心にしたベスト盤はこんなのがあります。

 

田園 KOJI TAMAKI BEST

田園 KOJI TAMAKI BEST

 

 

ただ、田園にこだわらないならば、僕としては是非「JANK LAND」を試してほしいところです。ミスチルの桜井もこの一枚を高く評価しています。ジャケ写が衝撃的でちょっと引いてしまいますが、アルバムの総合力でいったら過去最高傑作といってもいい秀作です。 

 

JUNK LAND

JUNK LAND

 

 このまま驀進し続けるかに思われた玉置ですが、薬師丸ひろ子との離婚、その後の安藤さと子との結婚を機に、自身は軽井沢に引っ込むようになり、作風もまた変わっていきます。

 

3 軽井沢時代(1999年~2006年)

厳密に玉置が軽井沢に住んでいた年は分かりませんので、あくまで作品単位のスパンで話します。軽井沢時代は更に以下のように分かれます。

 ⑴ 渋めの洋楽色を強めた時期(1999~2001年)

ニセモノ

軽井沢時代までの過渡期は玉置も落ち着かない感じでした。2度目の離婚が影響しているんじゃないかな・・。コンサートを途中で辞めちゃったのもちょうどこのころ。

 

しかし安藤さと子と再婚してから徐々に落ち着きを取り戻します。

作風もその心境が現れているのか、概して落ち着いたカントリーミュージックチックなものが増えていきます。田園とは異なり渋めの洋楽をイメージしたものが多いです。上記のアルバム「ニセモノ」の玉置の風貌からも分かるように、ジョンレノンやエリッククラプトンあたりを意識している可能性が高いですね。

 

ファンの目線で見ると、このころも良い曲が多いと思うのですが、ちょっと「枯れた」感じがするインパクトの薄い作品が多く、あまり初心者向けではないかもしれません。でも、若くなくなってくるとこういう歌の方が染みるんだよな~。aiboなんて最近になって好きになりましたもの。

 

⑵ 軽井沢の安全地帯時代(2002~2003年)

安全地帯IX(完全生産限定盤)(紙ジャケット仕様)

で、その渋めの洋楽路線のまま安全地帯を復活させちゃいました、というのがこの時期。ジャケットからも分かるように以前の安全地帯とは違い、かなり「おとなしめ」です。10年で人ってこんなに変わるものなのか・・。

※ちなみに10年前の安全地帯

安全地帯VIII~太陽

この時期には、上記の「安全地帯Ⅸ」のほか、「安全地帯Ⅹ~雨のち晴れ~」もリリースしていますが、Ⅸよりも若干明るくてソロっぽい曲が増えたくらいで、大体の傾向は一緒。

 

玉置の歌唱も、以前のように吠えるような情熱的な歌い方ではなく、ずいぶんフラットなものになりました。確かに聴きやすい歌唱ですが、癖がない分「うまみ」もおとしちゃった気がするのは僕だけかな・・。

 

とはいえ、曲自体はこのころの作品はかなり安定感があります。一聴して「おおっ!」とはならないけど、噛めば噛むほど味が出てくるような作品が多いです

安玉のファンになって、インパクトの薄い曲でもその良さが分かるようになったらこの時期の作品も試してみるといいでしょう。

 

⑶ 再びソロ活動へ・・(2004~2006年)

プレゼント

安全地帯の活動はアルバム2枚で途切れてしまい、その後玉置は再びソロ活動へ。

従前の軽井沢テイストは相変わらずですが、このころの作品はポップ色があって渋さが抑えられている分、比較的聴きやすいです。上に記したアルバムの先行シングル「プレゼント」はドラマの主題歌にもなりましたし、玉置初心者にも結構受け入れられた曲です。

 

癖も渋さも控えめな安定した作品を作っていた時期なので、田園時代のコミカルな感じが苦手な人はこの時期の曲を聴いてみるのもいいかもしれません。特にこのころリリースしたライブアルバムは、玉置の歌の調子も安定しており、下手なベスト盤を聴くより彼の良さがよくわかる一枚だと思います。

 

LIVE!!「今日というこの日を生きていこう」

LIVE!!「今日というこの日を生きていこう」

 

 総じて、この時期はソロの安定期です。玉置自身も、このころになると「軽井沢に住む優しいおじさん」というキャラが板についてきました。

しかし、ファンの中には「いい人になろうと無理をしている」「覇気がなくなった」というネガティブな評価をする人もいますので難しいところです。もっともその「反動」が後になってきますけど・・。

 

4 軽井沢時代の崩壊(2007~2009年)

惑星

このままソロとして続くのかな・・と思いきや、やっぱり続きません。 

 安藤さと子と離婚、そして軽井沢からの離脱。いわゆる「軽井沢時代」の終焉です。原因はいろいろあるでしょうが、某プッツン女優の暴露本が影響していることはほぼ間違いないでしょう。

 

 暴露本の影響で、玉置は「いい人」のイメージを保っていられなくなります。玉置が「いい人」でいられた舞台である軽井沢にいる理由もなくなったんでしょうね。

 

上に挙げた「惑星」はそんな軽井沢時代の面影を残す最後の作品。といっても安藤さと子が消えた影響か、作品には悲壮感が溢れています。このころの玉置が歌っている姿を見ると目が死んでるもんな・・。

根底には「やっぱり、ちゃんとした大人にはなれなかった・・」という 無念さがあったのでしょうか。

 

とはいえ、このころ発売されたアルバム「惑星」の出来が悪いかというとそうでもありません。やっぱり彼は薄幸な歌が似合うんです。メタメタになりながらも進んでいく情景が浮かんでくる曲が多く、収録曲の「ピラニア」「歩く男」などは、僕自身心が弱ったときによく聴きます。

 

ヒット曲がない時代ですが、ダメ男の悲壮感ただようAORという方向性が好きな人には間違いない作品が多いですね

 

5 そしてまた次回へ続く

軽井沢時代をすぎた2008年以降、玉置は慢性膵炎などの病気を患って活動を休止してしまいます。そして再び安全地帯として復活するんですが、それはまた次回に見ていきましょう。

 

ここまでお付き合いくださってありがとうございます。